物作りで、したくないことを絶対にしないために。北の住まい設計社 東川本社
2010.02.09 Tuesday

札幌から車を飛ばして4時間。
猛吹雪でホワイトアウトに遭いながらも
この時代には珍しいほどのこだわった物作りで知られている
北の住まい設計社、東川工場にいってきた。
旭川にほど近い東川は、マイナス30度に達する事もある
寒さの非常に厳しい土地である。
どうして
こんな一面銀色の森のなかに工場なんか建てて、
家具を作ってるんだろう。

スカンジナビア半島の意匠を取り入れた家具づくりのちいさな工房として
冬の寒さが非常に厳しい東川に設立されたこの工場。
今では少しずつ棟がふえて、作る物の規模も大きくなり
とうとう今では住宅を作るほどになった。
少数ながらも全国に根強いファンが居る。

この村みたいな会社で、広報をしている
須藤嘉代さんという若い女性が案内をしてくれた。
須藤さんは以前アパレルメーカーにつとめていたが
友達のすすめでやってきたこの北の住まい設計社の仕事と
生き方に衝撃を受けてしまい、ここで働くことになった。
アパレル業界の季節感と離れてしまった仕事とちがい、
ここでは季節と人生があまりにも仕事と密着している。
人材募集をしていないこの会社に何度も足を運び、
彼らと一緒に働こうと思ったのだという。
就職はしたものの、予想以上に東川の自然は厳しかった。
おびただしい数の虫がでるのでトンボや蚊をよけるために
傘をさしてあるいたりと、現実と戦いながら仕事をしている。
まだ仕事にも環境にも慣れていないけれど、
と笑う須藤さんは
長靴とナイロンジャケットに身を包み、
きらきらした笑顔でこの工場での暮らしの美しさを語っていた。
流行の服を着て
華やかなアパレルの世界に居た頃よりも、
きっと生き生きしているのだろう。
この工場は
どうしてここまで人を引きつけるのだろう。

ここは廃校を利用した工房。小さな中学校だった校舎を
改造したり、まわりに新しい工房をてづくりで建てたりして
職人の村のような工場をつくりあげた。

ここの数少ない工具。
質の高い家具作りの現場をみようと同業者が視察に来るのだが、
あるのは本当に最低限の旧式の機械だけ。
みんな一様に「こんな環境でやっていたなんて!」と驚いて帰るのだそうだ。
機械は最低限しか使わず、ほとんどが職人さんの手によって作られている。

昔は教室だった工房。

キッチン。
北の住まいではダイニングを最低でも10畳とることをすすめている。
食事こそ家族のコミュニケーションの中心であり、
人生で一番大切な事だという信念からなのだとか。
それより狭いダイニングを作ることは、原則として つくらない。
家の中心はダイニングでなければならないからだ。

おとぎ話みたいなきれいな景色。
キタキツネやエゾシカもよくでてくるらしい。
と、
須藤さんが「一番見てほしいところ」だと行って
遠くの建物に案内してくれた。
工場の中心部からだいぶあるく。

はなれの倉庫。ここが北の住まいの物作りの中心部なんだという。

ものづくりの中心とは、家具や家の素材となる木のことだった。
ここでは絶対に防腐剤を使わない為に、
乾燥させた木を一年間寝かせる。
しかし、この寝かせるという行為が生半可な事ではない。
すべての木の高さと位置を、一年かけてまんべんなくまぜあわせて
湿度と温度、日照が均一になるようにするのだという。
有機溶剤を使っているハウスメーカーからみれば
なんと無駄な事を、と思われるかもしれない。

斜めにスリットをいれた木材の土台。こうすることで設置面積を小さくして
湿気をふせいでいる。それでも、何度もかき混ぜるのだが。。。
信じられない。
まったくもって狂気に近い物作りへのこだわりようだ。
やりたくない事は、絶対にやりたくないのである。

工場一の熟練の職人がいるメインの工房。東川は
最も寒い時期。札幌とは比べ物にならない冷気がぴりぴりした。

「一番いい時期にここに来たよね?」
と職人さんが冗談まじりに語りかけてくれた
でも中に入るとさすが、暖炉一つで建物はあたたかい。

これは床の裏面。見えない部分にスリットをいれて、
夏の湿気に寄る膨張から床材を守る。
さらに床に敷き詰める床材も
大小さまざまなカタチをパッチワークにして敷く。
丸太をあますところなく使おうとすれば
どうしても均一な床材にしあがらない。
不揃いな床材が職人さんの手で
パズルのように計算されて敷き詰められている様は
いかにも人の手でつくられた風合いを醸し出している。
もちろん こんな手間のかかること、普通はしない。
小さくなった端材は捨てる。
でも、どんなに苦労してもいいから、それはしたくないのだと言う。

建築や住まいに関する事だけではなく、
食品を売ったりレストランをやったりもしている。
レストランはここに訪れて、
その哲学に感銘を受けたイタリアンのシェフがやっている。
いい物作りが、いい人を集めていく。

焼き上がったじゃがいものルヴァン。
なかにぎっしりとジャガイモがつまっていて食べごたえがあった。
このときスープを頼まなかったことを今でも後悔(笑)
最初のうちは
家具作りを
どうしてこんな寒くて不便なところで??
と不思議でしかたがなかったのだが、
会って触れてみるとよくわかる。
ここで働いている人たちは 共通して
「人生」と「仕事」を分けて考えていない。
まずは、自分たちの理想の暮らしを実現してみることで
理想の商品を作り上げようとしている。
北欧のくらし を実現するためには、
この厳しい自然は必要不可欠だし、滅多に行けない場所にあることで
ブランド力を高めてもいる。
都会の仕事の仕方と差別化するためには
ある程度の物理的な距離も必要だということも
もしかしたらあるのかもしれない。
この人里離れた場所に居る限りは、おそらく
「こんなものでいいでしょ?」という
妥協した仕事や生き方とは
永遠に無縁で居られるはずだ。
北の住まい設計社 東川ショールーム
北海道上川郡東川町東7号北7線
tel.0166-82-4556/fax.0166-82-3775
営業時間 10:00〜18:00 水曜定休








































